小規模事業者持続化補助金の【賃金引上げ枠】とは

 今回は小規模事業者持続化補助金(=以下、持続化補助金)の申請類型の1つである【賃金引上げ枠】について解説します。
 持続化補助金は「持続的な経営に向けた経営計画に基づく、販路開拓等の取組や、その取組と併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援するため」に小規模事業者が利用できる補助金になります。

 また、第12回の採択率は
・申請数:13,373者 採択数:7,438者 採択率:約55.6%
 となっており、約半分が不採択となってしまう結果となっています。持続化補助金は小規模事業者であれば申請ができる補助金である一方、誰でも申請すれば通るものではなく、申請するにあたりしっかりとした事業計画を策定する必要があります。

賃金引上げ枠の概要

 持続化補助金の賃金引上げ枠は、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

条件①:補助事業の終了時点において、事業場内最低賃金が申請時の地域別最低賃金より+50 円以上であること。
条件②:すでに条件①の事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+50円以上を達成している場合は、申請時点において直近1か月で支給している賃金が事業場内最低賃金より+50円以上とすること。

以下、持続化補助金の公募要領から抜粋している概要になります。

 持続化補助金の賃金引上げ枠は、これから賃金を引き上げようと考えている事業者様にぴったりの申請枠になります。賃上げしてしまった後では、賃上げした金額から更に賃上げをする必要があり、人件費が高騰してしまう恐れがあるため、計画的な申請が必要になります。

賃金引上げ枠の補助金額

賃金引上げ枠における補助金額は最大250万円が受け取れる

賃金引上げ枠の補助率は、(1)通常枠と同様の補助率2/3、(2)赤字事業者である場合の3/4、2つのパターンが適用されます。赤字事業者とは、直近1期または直近1年間の課税所得金額がゼロ以下である事業者のことを指します。

 そのため、(1)の場合は、300万円の設備投資を行い、補助率2/3をかけると、【300万円×2/3=200万円】の補助金が受け取ることができます。しかし、(2)の場合は、267万円の設備投資を行い、補助率3/4をかけると、【267万円×3/4≒200万円】を受け取ることができます。つまり、赤字事業者の場合は、200万円の補助金を受け取るための投資金額が267万円と33万円が少なく済むというところがメリットです。
 また、加えてインボイスに登録することで補助金が+50万円追加で受け取れるインボイス特例があります。その場合は、①375万円を投資して補助率2/3、②333万円を投資して補助率3/4でそれぞれ最大250万円が受け取れるということになりますので、要件が該当すれば賃金引上げ枠を含めた通常枠以外でのご申請をおすすめします。

小規模事業者持続化補助金ホームページ

賃金引上げ枠の補助対象者

持続化補助金のメリットは、創業直後の個人事業主・法人でも活用できるところがあります。要件は以下の通りです。
会社および会社に準ずる営利法人(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、特例有限会社、企業組合・協業組合、士
業法人(弁護士・税理士等))
・個人事業主(商工業者であること)
・一定の要件を満たした特定非営利活動法人

 となっています。事業を行っている方はもちろん、創業して間もない方でも、個人事業主・法人・士業事務所等の小規模事業者であれば、どなたでも申請できる補助金となっていますので、創業して間もない方や法人成りして事業を拡大していきたい方におすすめの補助金となっています。

 しかし、賃金引上げ枠の場合は下記に該当する事業者は補助対象外となりますので、注意が必要です。
①従業員がいない場合(役員ではなく従業員の賃金を引き上げることが目的のため)
②事業場内最低賃金の算定対象者は、申請時点において在籍している従業員のため、すでに退職している従業員は、事業場内最低賃金の算定対象外となります。また、当初の計画通りに従業員の賃金の引き上げがなされていない場合も対象外となります。
③申請時点及び補助事業終了時点において、支給している事業場内最低賃金が、地域別最低賃金以下である場合。


 なお、事業をこれから営む方や事業拡大を考えている方は、持続化補助金は実施のスケジュールが決まっています。すでに購入したものや実施期限より遅れて契約したものは対象外になる可能性がありますので、ご自身の事業化スケジュールをよく考えてご検討ください。注意点として、実施のスケジュールを下記に記載しておりますので、最後までお読みください。

 また、「うちは対象になるの?」「どんな事業に活用できるの?」そんな疑問をお持ちの方は下記までお気軽にお問い合わせください。40分間の無料相談を承っております。

賃金引上げ枠の補助対象経費

対象経費対象となる経費(抜粋)対象とならない経費(抜粋)
①機械装置等費
(補助事業の遂行に必要な機械装置等の購入に要する経費)
・生産販売拡大のための鍋・オーブン・冷凍冷蔵庫
・新たなサービス提供のための製造・試作機械
・自動車等車両
・自転車・文房具等・パソコン
・その他汎用性が高く目的外使用になりえるもの
②広報費
(パンフレット・ポスター・チラシ等を作成および広報媒体等を活用するために支払われる経費)
・チラシ・カタログの外注や発送
・新聞・雑誌等への商品の広告
・看板作成・設置
・郵送によるDMの発送
・名刺
・商品・サービスの宣伝広告を目的としない看板・会社案内パンフレットの作成・求人広告
③ウェブサイト関連費
(販路開拓等を行うためのウェブサイトや EC サイト等の開発、構築、更新、改修、運用をするために要す
る経費)
※ウェブサイト関連費は、補助金交付申請額の1/4(最大50万円)が上限です。ウェブサイト関連費のみによる申請はできません。
・商品販売のためのウェブサイト作成や更新
・インターネット広告
・商品販売のための動画作成
・システム開発、構築に係る経費
・SNSに係る経費
・商品・サービスの宣伝広告を目的としな い広告(単なる会社の営業活動に活用されるものとして対象外)
・ウェブサイトに関連するコンサルティング、アドバイス費用
④展示会等出展費
(オンラインによる展示会・商談会等を含む) 新商品等を展示会等に出展または商談会に参加するために要する経費
展示会出展の出展料等に加えて、関連する運搬費(レンタカー代、ガソリン代、駐車場代等は除く)・通訳料・翻訳料も補助対象となります。・国(国以外の機関が、国から受けた補助金により実施する場合を含む)により出展料の一部助成を受けるもの
・販売のみを目的とし、販路開拓に繋がらないもの
・文房具等の事務用品等の消耗品代
・飲食費を含んだ商談会参加費等
⑤旅費
(補助事業計画(様式2)に基づく販路開拓(展示会等の会場との往復を含む。)等を行うための旅費)
・展示会への出展や、新商品生産のために必要な原材料調達の調査等に係る、宿泊施設 への宿泊代
・バス運賃・電車賃・新幹線料金(指定席購 入含む)・航空券代(燃油サーチャージ含む。エコノミークラス分の料金までが補助対象)、航空保険料、出入国税
・国の支給基準の超過支出分
・日当
・ガソリン代・駐車場代・タクシー代・レンタカー代・高速道路通行料・グリーン車・ビジネスクラス等の付加料金分
・視察・セミナー等参加のための旅費
⑥開発費
(新商品の試作品や包装パッケージの試作開発にともなう原材料、設計、デザイン、製造、改良、加工す るために支払われる経費)
・新製品・商品の試作開発用の原材料の購 入
・新たな包装パッケージに係るデザイン費用
・文房具等
・開発・試作した商品をそのまま販売する場合の開発費用
・デザインの改良等をしない既存の包装パッケージの印刷・購入
⑦資料購入費
(補助事業遂行に必要不可欠な図書等を購入するために支払われる経費
・取得単価(税込)が10万円未満及び購入する部数・冊数は1種類につき1部(1冊)を限度となります
⑧雑役務費
(臨時で雇い入れた者のアルバイト代、派遣労働者の派遣料、交通費)
作業日報や労働契約書等の提出が必要となります。作業日報や労働契約書等につ いては、詳細な説明や資料を求めることがあります。・臨時の雇い入れとみなされない場合
・通常業務に従事させるための雇い入れ
⑨借料
(補助事業遂行に直接必要な機器・設備等のリース料・レンタル料として支払われる経費)
見積書、契約書等が確認できるもので、本事業に要する経費のみ補助対象となり、契約期間が補助事業期間を越える場合は、按分等の方式により算出された期間分のみが補助対象・自主事業など補助事業以外にも使用するもの、通常の生産活動のために使用するもの
・事務所等に係る家賃
⑩設備処分費
(販路開拓の取組を行うための作業スペースを拡大する等の目的で、事業者自身が所有する死蔵の設備機器等を廃棄・処分する、または借りていた設備機器等を返却する際に修理・原状回復するのに必要な経費)
・既存事業において使用していた設備機器等 の解体・処分費用
・既存事業において借りていた設備機器等の 返却時の修理・原状回復費用(賃貸借契約 が締結されており、使用者であることが法的 に確認できることが必要です)
・既存事業における商品在庫の廃棄・処分費 用
・消耗品の処分費用
・自己所有物の修繕費
・原状回復の必要がない賃貸借の設備機器等
11委託・外注費
(上記1から10に該当しない経費であって、補助事業遂行に必要な業務の一部を第三者に委託(委 任)・外注するために支払われる経費)
・店舗改装・バリアフリー化工事
・利用客向けトイレの改装工事
・製造・生産強化のためのガス・水道・排気工事
 ・移動販売等を目的とした車の内装・改造工事
・補助事業の販路開拓や業務効率化に結びつかない工事(単なる店舗移転を目的とした旧店舗・新店舗の解体・建設工事、住宅兼店舗の改装工事における住宅部分、既存の事業部門の廃止に伴う設備の解体工事)
・「不動産の取得」に該当する工事
※その他の補助対象外経費等につきましては、お問い合わせください。

賃金引上げ枠のスケジュール

持続化補助金の事業実施までのスケジュールは以下の通りとなります。(下記は第14回の場合)

持続化補助金を含めた補助金は、原則採択を受けた後、必要書類を提出して事務局から「交付決定」を受けてから設備の購入や契約等ができるようになります。そのため、交付決定を受ける前の日付でお金が振り込まれていたり、納品書の日付になっていますと認められませんので、ご注意ください。必ず交付決定を受けてから、事業を始めるようにしてください。
 また、事業の実施期間があります。第14回の場合は2024年8月末までとなっており、終了日までに契約や購入を終えている必要があります。その後、9月10日(8月末より前に事業が終わっている場合は終了日から30日以内)までに実績報告により事業の成果や領収書・請求書等を提出します。その内容が精査され、認められれば無事に補助金の入金となります。

 

賃金引上げ枠の申請時の注意点

持続化補助金は、全国商工会議所・商工会が主催となって運営をしています。申請する前に最寄りの商工会等に事業計画書を持参して事業計画書の内容を確認しましたという書類として、「事業支援計画書(様式4)」を発行していただきます。そのため、商工会等にもよりますが、事業計画の内容によっては即時発行していただけず、修正対応となってしまうケースもございますので、必ず申請まで余裕を持って事業計画書の作成に取り組まれることをおすすめします。
 「事業支援計画書(様式4)」を発行いただけたら、事業計画書とその他資料一式を揃えて電子申請または郵送での申請を行います。なお、電子申請の場合は、「Gビズ」と呼ばれる電子申請で使用するアカウントの発行が必要になります。こちらは即日発行することが可能になりましたが、準備の意味も込めてお早めに発行されることをおすすめします。取得の方法は下記Gビズのページに記載がございます。

まとめ

 持続化補助金は申請できる対象者が多いため、採択率も約50%程度となっております。しかし、不採択の場合、何回でも申請することは可能ですが、事業実施ができない(進まない)ことや事業実施期限が決まっていることから、より初回で採択されるように申請書を作り込まなければなりません。もし、ご自身で計画書の作成が難しい場合は、当社では持続化補助金の申請作成サポートを行っておりますので、お気軽にご連絡お待ちしております。

もし、
 ・自分1人では事業計画書が作れない
 ・どんな経費に使えるのかがイマイチわからない
 ・初めての補助金申請でとても不安
というお客様はお気軽に無料相談からお問い合わせください。少しでも本記事が事業者様の事業にお役立てできれば幸いです。また、他に活用できる各補助金や税制優遇措置に関する詳細は下記をご覧ください。

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