「社外人事部」とは、社内に人事担当者がいない、または人事機能が足りない企業に代わって、外部の専門家が人事の役割を担うサービスです。採用や育成、評価制度づくり、面談の運営などを、自社の人事部のような立場で継続的に支援します。

従業員30〜100名ほどの会社では、こうした人事の仕事を社長が自ら抱えていることが少なくありません。この記事では、社外人事部に任せられる業務、メリット・デメリット、人事担当者を採用する場合との違いを整理します。自社に合うかどうかを考える材料にしていただければ幸いです。

社外人事部とは

社外人事部とは、外部の人事の専門家が、会社の「人事部」として継続的に関わるサービスのことです。単発の研修や制度づくりの請負ではなく、経営者の相談相手として採用から定着までを支える点に特徴があります。

「人事の外注」と聞くと、給与計算や社会保険の手続きを思い浮かべる方も多いかもしれません。こうした事務的な業務は、社会保険労務士事務所や代行会社が担うのが一般的です。

また、一般的な社外人事部は、採用の管理や面接の代行など人事プロセスの一部を代行する企業は最近増えています。当社の場合、社外人事部が主に担うのは、もう少し経営に近い領域です。どんな人を採るか。どう育てるか。どう評価するか。そうした「人と組織」に関わる判断や仕組みづくりを、社長と一緒に考え、実行していき、企業の業績向上に人事面から貢献していくのが当社のやり方です。

呼び方は「社外人事」「人事顧問」「人事アウトソーシング」などさまざまです。名前よりも、どこまで関わってくれるのかを確認することが大切です。

中小企業で人事機能が不足しやすい理由

中小企業で人事機能が不足しやすいのは、人事の仕事が「急ぎではないが重要な仕事」になりやすく、専任者を置く余裕もないためです。

従業員が30名を超えるあたりから、社長ひとりで全員の様子を把握するのは難しくなってきます。それでも人事専任者を置くほどではないと考え、人事部という名の下、総務や経理の担当者が兼任していたり、社長が自ら面接や面談をしていたりする会社は少なくありません。

すると、欠員が出てから慌てて採用する、評価は年に一度なんとなく決める、育成は現場任せになる、といった状態が起きやすくなります。どれも目の前の売上や顧客対応に比べると、後回しにされがちだからです。

もう一つの理由は、人事の仕事がそれぞれつながっていることです。採用した人をどこに配置し、どう育て、どう評価し、どう報いるか。本来は一つの流れですが、兼任だとどうしても場当たり的な対応になり、ばらばらに動いてしまいます。

社員が辞める、管理職が育たないといった問題が起きると、本人の能力や意欲のせいにしたくなるかもしれません。ただ実際には、人が動きやすい仕組みが整っていないことが原因になっている場合も多くあります。

社外人事部に任せられる主な業務

社外人事部に任せられる業務は、採用、育成、評価制度、面談、組織づくりなど、人事の企画から運用まで幅広くあります。どこまで任せるかは会社によって変わるため、まずは社長が一番手を取られている業務から考えるのがおすすめです。

採用

採用では、どんな人材が必要かを整理するところから関わるのが一般的です。求人票の作成、求人媒体の選定、面接への同席、選考基準づくりなどを支援します。

中小企業の採用でよくあるのが、「とにかく人が足りないから採る」という進め方です。社外人事部が入ると、事業計画から見て今後どんな役割の人が必要かを一緒に考えられます。結果として、採用後のミスマッチを減らすことにもつながります。

社員・管理職の育成

育成では、新入社員から管理職まで、それぞれに何を身につけてほしいかを整理し、研修やOJTの仕組みをつくります。

中小企業で特に悩みが多いのが管理職の育成です。プレイヤーとして優秀だった人が管理職になり、部下の育て方がわからず苦労している。そんな場面はよく見られます。社外人事部は研修だけでなく、管理職の個別の相談相手として現場を支えることもできます。

人事評価制度

人事評価制度では、評価基準づくりから、評価シートの設計、評価者への説明、運用の定着までを支援します。

評価制度は、作ること以上に運用することが難しい仕組みです。制度を作っても、評価する上司が使いこなせなければ形だけのものになってしまいます。社外人事部が継続して関わることで、運用しながら制度を見直していけます。

面談・1on1

面談や1on1では、社員との定期的な対話の場づくりを支援します。社外の立場で社員と直接面談する場合もあれば、上司が1on1を行えるよう進め方を伝える場合もあります。

社長や上司には言いにくいことでも、社外の人になら話せるという社員は少なくありません。不満や悩みを早めに把握できれば、離職の予防にも役立ちます。

会議運営・組織改善

会議運営や組織改善では、幹部会議への同席、情報共有の仕組みづくり、組織体制の見直しなどを支援します。

会議が報告だけで終わる、決めたことが実行されないといった悩みは、多くの会社が抱えています。第三者が入ることで、議論の進め方や役割分担を見直すきっかけになります。

社外人事部を導入するメリット

社外人事部を導入する一番のメリットは、社長が人事の仕事を一人で抱え込まずに済み、人の仕組みを継続して整えられることです。

主なメリットは次のとおりです。

  • 社長の時間を経営に使える:面接や面談、制度づくりの負担が減り、事業の判断に時間を回せます。
  • 専門的な知見をすぐに使える:採用・育成・評価の経験を持つ人に、必要なときに相談できます。
  • 人事を一つの流れで考えられる:採用から定着までを、つながったサイクルとして設計しやすくなります。
  • 社外の視点が入る:社内では言いにくいことや、慣れで見過ごしている課題に気づきやすくなります。
  • 必要な範囲から始められる:正社員を一人雇うより、負担を抑えて始めやすい場合があります。

なかでも大きいのは、経営の方向性と人事を結びつけられる点です。この先の数年で事業をどう伸ばしたいのか。そこから逆算して、必要な人材や育て方を考えられるようになります。

社外人事部のデメリット・注意点

社外人事部のデメリットは、社内にノウハウが残りにくいことや、社内事情の理解に時間がかかることです。任せ方によっては、外部に頼りきりになってしまうおそれもあります。

注意したい点を挙げます。

  • 社内に人事の力が育ちにくい:すべてを任せると、契約が終わったときに何も残らないことがあります。社内の誰かと一緒に進め、少しずつ引き継ぐ形が理想です。
  • 社風や人間関係の理解に時間がかかる:最初の数か月は、会社のことを知ってもらう期間と考えておくと安心です。
  • 費用が継続的にかかる:月額契約が多いため、何を期待するのかを最初に明確にしておく必要があります。
  • 社員が戸惑うことがある:外部の人が面談や会議に入る理由を、社長から事前に伝えておくと受け入れられやすくなります。
  • 支援する側によって合う・合わないがある:得意分野や進め方によって、成果は変わります。

社外人事部は「丸投げ先」ではなく、「一緒に人事を動かす相手」と考えると、うまくいきやすいはずです。

人事担当者を採用する場合との違い

人事担当者を採用する場合との大きな違いは、社内に常駐して日々の業務を担うか、外部から専門性を活かして仕組みづくりを支えるか、という点です。どちらが合うかは、会社の規模や課題によって異なります。

比較項目人事担当者を採用する社外人事部を活用する
関わり方社内に常駐し、日々の業務に対応定期的な訪問や打ち合わせで支援
専門性採用できた人の経験に左右される複数の会社を見てきた経験を活かせる
動き出し採用活動から始まり、時間がかかる契約後すぐに動き出しやすい
費用人件費と採用費が継続的にかかる支援範囲に応じた費用
ノウハウ社内に残りやすい意識して引き継がないと残りにくい
社員との距離近く、日々の変化に気づきやすい第三者として本音を聞きやすい

人事経験の豊富な人材を中小企業が採用するのは、簡単ではありません。採用できたとしても、一人で採用から評価まで担うのは負担が大きくなります。

現実的な進め方として、まず社外人事部で仕組みを整え、その後に社内の担当者を育てたり採用したりする方法もあります。社内担当者と社外人事部を組み合わせる会社もあります。

どんな会社に社外人事部が向いているか

社外人事部が向いているのは、社長が人事の仕事を兼任していて手が回らず、人の問題が事業の成長を止めはじめていると感じている会社です。

たとえば、次のような状況に心当たりはないでしょうか。

  • 人事専任者がおらず、採用や面談を社長が自ら行っている
  • 採用しても定着せず、同じポジションの募集を繰り返している
  • 評価制度がない、またはあっても形だけになっている
  • 管理職が育たず、社長に判断が集中している
  • 事業を伸ばしたいが、それを担う人材の姿が描けていない
  • 人事担当者を置きたいが、何から任せればよいかわからない

一方で、人事部がすでに機能していて、手続き業務だけを外に出したい場合は、給与計算などの代行サービスの方が合っているかもしれません。困っているのが「手続き」なのか、「人と組織の仕組み」なのかを分けて考えると、判断しやすくなります。

社外人事部を選ぶときのポイント

社外人事部を選ぶときは、制度を作るだけでなく運用まで伴走してくれるか、自社の経営方針を理解しようとしてくれるかを確認することが大切です。

  • 経営の話から入ってくれるか:いきなり制度やツールの話をするのではなく、事業の方向性や経営理念を聞いてくれるかを見てみてください。
  • 運用まで関わってくれるか:制度の納品で終わるのか、実際に回るまで支援してくれるのかは大きな違いです。
  • 人事を一つの流れとして見ているか:採用だけ、研修だけではなく、採用から定着までのつながりを意識しているかを確認しましょう。
  • 中小企業の現場を知っているか:大企業向けの仕組みをそのまま持ち込むと、運用が重くなりがちです。
  • 支援範囲と費用が明確か:どこまでを、どのくらいの頻度で支援するのかを事前にすり合わせておきましょう。
  • 本音で相談できる相手か:長く付き合う相手なので、社長との相性も欠かせません。

初回の相談で、自社の課題をどう整理してくれるかを見ると、相手の考え方がよくわかります。

まとめ

社外人事部は、人事専任者がいない中小企業にとって、社長が抱えている人事の仕事を分担し、人の仕組みを整えていくための選択肢の一つです。

採用、配置、育成、評価、報酬、定着は、それぞれ別々に手を打つよりも、一つのサイクルとして整えた方が効果が出やすくなります。そして、仕組みは作って終わりではなく、現場で実際に使われてはじめて意味を持ちます。

社外人事部が合うかどうかは、会社の規模や課題、社長が何を求めているかによって異なります。まずは「自社の人事で、いま何が回っていないのか」を整理することから始めてみてください。

AIで業務を効率化できる時代になっても、組織を前に進めるのは結局、人です。株式会社Daysコンサルティングは、「中小企業の成長を『人』で止めない」という考えのもと、経営理念と事業戦略から逆算して人材戦略を考え、制度づくりから運用までを一緒に進めています。社員の能力や意欲だけに原因を求めるのではなく、人が動きやすい仕組みに目を向けることを大切にしています。

よくある質問

Q1. 社外人事部と社会保険労務士の違いは何ですか?

社会保険労務士は、社会保険の手続きや就業規則、労務の法令対応などを専門とする国家資格者です。社外人事部は、採用・育成・評価など、組織づくりに関わる領域を主に支援します。重なる部分もあるため、両者が連携して支援するケースもあります。

Q2. 従業員何名くらいから社外人事部を検討すべきですか?

明確な基準はありませんが、30名前後から社長が全員の状況を把握しにくくなる傾向があります。人数よりも、人の課題が事業の成長を妨げていないかで判断するのが良いと考えています。

Q3. 費用はどのくらいかかりますか?

支援する範囲や頻度によって大きく異なります。月額の顧問契約の形が多いため、複数の会社に相談し、支援内容と費用を比べてみることをおすすめします。当社の場合、「いきなり顧問で始めるのは不安」という企業様向けに小さく始められるプランもご用意しています。

Q4. 採用だけ、評価制度だけといった一部の業務だけを任せることはできますか?

多くの場合、一部の業務から始めることができます。ただ、人事の業務はつながっているため、一部だけ整えても別のところで問題が出ることがあります。全体の流れを意識しながら、優先順位をつけて進めるのが現実的です。

Q5. 社員にはどのように説明すればよいですか?

「社員を評価・管理するため」ではなく、「働きやすい仕組みをつくるため」という目的を、社長自身の言葉で伝えるのがよいでしょう。導入の背景を共有しておくと、社員の不安を減らせます。


自社の組織の状態を確認してみませんか

「うちにも社外人事部が必要だろうか」と迷ったら、まずは今の組織の状態を見える化するところから始めてみてください。採用・育成・評価・定着のどこに課題があるのかが見えてくると、次に打つ手も考えやすくなります。

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