社員が定着しない中小企業には、いくつかの共通点があります。入社前に聞いていた話と実際の仕事がずれていることが多くあります。給与以外に働き続ける理由がない、頑張りが認められている実感がない、そもそも相談できる相手がいない、この先の自分のキャリア像が描けない。どれも、社員本人の我慢や根性の問題ではなく、会社の仕組みの問題です。

この記事では、従業員30〜100名ほどの中小企業で社員が定着しない原因と、定着のために今日からできることを紹介します。

この記事でわかること

  • 社員が定着しない会社の5つの共通点
  • 「辞めるのは本人の問題」と考えると繰り返す理由
  • 退職の前に出やすいサイン
  • 定着のために今日からできること

社員が定着しない会社の5つの共通点

社員が定着しない会社に共通するのは、入社前後のずれ、働く理由の不足、認められている実感の不足、対話の不足、将来の見通しの不足の5つです。

Daysコンサルティングが経営支援の現場で集めた「100の事実」でも、人が定着している会社と、辞める人が続く会社の違いは、この5つにはっきり表れていました。

入社前に聞いていた話と、実際の仕事がずれている

入社してすぐに辞める人の多くは、「思っていた仕事と違った」と感じています。

現場では、採用の基準がスキルと年齢だけで、どんな考え方の人に来てほしいのかが決まっていない会社をよく見ます。採用したい人と、実際に採用している人がずれているのです。人が欲しいあまり、求人票に良いことだけを書いてしまうと、入社後のずれはさらに大きくなります。

給与以外に、この会社で働き続ける理由がない

給与だけで社員をつなぎ止めようとすると、より条件の良い会社が現れたときに引き止められません。よく考えてみてください。給料が良くて当社に入社してきても、それよりも高い金額を払う会社が現れた瞬間また次に行ってしまいます。業界水準の給与設計や、求職者のターゲット像を明確認し、給料以外の魅力を企業として作り込んでいく必要があります。

また、当社がご支援させていただいた現場でも、辞める・残るの判断が給与しかない会社では、社員から常に給与の交渉が来る状態になっていました。一方、人が定着している会社では、会社の目的や仕事の意味、一緒に働く人、働き方など、給与以外の魅力をまずはきちんとMVVという形で策定し、社長がきちんと従業員に伝え浸透を図ることで、社員が自分の言葉で話すことができます。

頑張りが認められている実感がない

離職の原因は、ほとんどが「給与」「人間関係」になっていると言われていますが、個人的に最も現場の支援で感じる理由は、「きちんと評価されている実感がないこと」だと感じます。自分の頑張りを誰も見ていないと感じると、社員は少しずつ気持ちが離れていきます。

現場では、失敗を責める空気が強く、挑戦を認め合う雰囲気がない会社が目立ちました。また、残業の多さや声の大きさで評価が決まっていたり、社長が気に入った人にだけ声をかけたりしている会社では、まじめに働く社員ほど不公平を感じていました。

困ったときに相談できる相手がいない

上司が忙しく、指示しっぱなし、任せっぱなしになっている会社では、社員は悩みを抱えたまま働くことになります。

特に若手は、認められたい、褒められたいという気持ちが強い一方で、強く叱られると辞めてしまうこともあります。昔ながらの「見て覚えろ」「根性で乗り切れ」というやり方では、今の若手はついてきません。一人ひとりに合わせて関わる場が必要です。

そのために、別記事でご紹介した1on1面談などで定期的にコミュニケーションを意図的に取ることが求められていきます。最初からいきなり部下に向かって、「最近どう?楽しい?」と聞かれても「あぁはい、楽しくやってます」しか返ってきません。まずは場づくりをして繰り返し実施していくことで関係性を構築していきます。

この先の自分のキャリア像が描けない

特に若年層〜30代の中堅社員に多いのが、この会社にいて、数年後にどうなれるのかが見えないと、社員は外に答えを探し始めます。

現場でも、社員を育てる道筋がなく、キャリアアップを考えるきっかけがない会社では、成長意欲のある人から辞めていきました。理由の説明がないまま異動や職種の変更を行い、納得できずに意欲を落とした例も少なくありません。

「辞めるのは本人の問題」と考えると、同じことが繰り返される

退職者が出たとき、「最近の若い人は続かない」「あの人は根性がなかった」と、本人の問題として片づけてしまうことはないでしょうか。

もちろん、個人の事情で辞める人もいます。何度言ってもうやらない、やろうとしない社員も事実います。ただ、同じような辞め方が続くなら、原因は人ではなく仕組みにある可能性が高いです。

現場では、退職した人や前にいた人の話がよく出てくる会社ほど、辞める人が続いていました。過去に目が向いていて、次の手が打たれていないためです。また、職場の会話が愚痴や不満ばかりになると、それについていけない優秀な社員から辞めていく、という場面も見てきました。

退職の前に出やすいサイン

社員の退職は、ある日突然起きるように見えて、実はその前にサインが出ていることがほとんどです。次のような変化に心当たりがあれば、早めに話を聞く場をつくってください。

  • 会議や打ち合わせで、発言が減った
  • 以前は出していた提案や意見を、言わなくなった
  • 有給休暇の取り方が変わった
  • 仕事の質は保っているが、それ以上のことをしなくなった
  • 同僚との雑談や、昼食に加わらなくなった

こうしたサインに気づくには、日ごろから社員と1対1で話す時間があることが前提になります。

社員の定着のために、今日からできること

社員の定着のためにできることは、まずは入社前のずれを減らす、入社後のフォローを決める、定期的に話す場をつくる、期待と評価を言葉にする、将来の見通しを示す、の5つです。すべてを一度に始める必要はありません。

求人票で「入社後の現実」を伝える

求人票には、良いところだけでなく、仕事の大変なところや、入社後に求めることも正直に書きます。今働いている社員に「この会社で働く理由」を聞き、その言葉を求人票に使うと、入社前後のずれが小さくなります。今働いている社員にインタビューしてみることも効果的です。

入社後3か月のフォローを決めておく

辞める人が多いのは、入社して間もない時期です。最初の3か月は、誰が、いつ、どのように声をかけるかを先に決めておきます。月に1回の面談だけでも、不安を早めに拾えます。特に初月の1ヶ月はメンターをつけるなどして、新人社員が1人になってしまわぬようにいつでも声をかけられる状況を作ってあげることで経営者の取り組むことです。ポイントは、声をかけられる状態を作ることで、ずっと手取り足取り一緒に教えてあげることではありません。

定期的に1対1で話す場をつくる

上司と部下が定期的に話す場があると、困りごとや不満が小さいうちに見つかります。進め方は、1on1が続かない中小企業へ|形だけで終わる原因と、社長が押さえたい進め方で詳しく紹介しています。

期待していることと、評価の基準を言葉にする

「何を頑張れば認められるのか」が見えると、社員は迷わずに力を出せます。事実をもとに認め、伝えることも大切です。評価制度が形だけになっている場合は、人事評価制度が運用されないのはなぜ?もあわせてご覧ください。

この会社での将来の見通しを示す

数年後にどんな役割を担ってほしいのか、そのために何を身につけてほしいのかを、本人と話す機会をつくります。異動や職種の変更をするときは、理由と期待をきちんと説明します。

上記の人事評価制度の構築と合わせて、経営計画→どんな人が評価されるかの基準→従業員の育成計画とキャリアプラン→評価基準とすると、企業としても成長できますし、社員もどこに向かって何をしたら良いかがより明確になります。

まとめ

社員が定着しない会社には、入社前後のずれ、働く理由の不足、認められている実感の不足、対話の不足、将来の見通しの不足という共通点があります。

辞める人が続くときは、本人の問題として片づけず、採用から育成、評価、対話までの仕組みのどこで止まっているかを見直してみてください。採用、配置、育成、評価、報酬、定着は、それぞれがつながっています。

AIで業務を効率化できる時代になっても、組織を前に進めるのは結局、人です。株式会社Daysコンサルティングは、経営理念と事業戦略から逆算して、採用から定着までの仕組みを一緒につくり、現場で実際に回るところまで支えています。今いる社員の声から入社後のずれを見つける求人票作成・改善支援や、採用・育成・評価・面談をまとめて支えるDays式 社外人事部も行っています。

よくある質問

Q1. 社員が辞める本当の理由は、退職のときに聞けますか?

退職のときに本当の理由を話してくれる人は多くありません。「家庭の事情」「キャリアアップのため」といった言葉の裏に、職場への不満が隠れていることもあります。本当の理由を知るには、辞める前の段階で、日ごろから話を聞ける関係をつくっておくことが大切です。

Q2. 給与を上げれば定着しますか?

給与は大切な要素ですが、給与だけで定着させるのは難しいのが実情です。給与以外に働き続ける理由がないと、より条件の良い会社が現れたときに引き止められません。仕事の意味や、認められている実感、将来の見通しとあわせて考えることをおすすめします。

Q3. 若手社員が定着しないのはなぜですか?

若手は、認められたい、成長したいという気持ちが強い一方で、強く叱られたり、放っておかれたりすると辞めてしまう傾向があります。定期的な対話の場をつくり、小さな成長をきちんと認めることが、定着につながります。

Q4. まず何から始めればよいですか?

最近辞めた人が、入社何年目で、どんなきっかけで辞めたのかを振り返るところから始めてみてください。共通点が見えてくると、入社前のずれなのか、入社後のフォローなのか、評価や対話なのか、手を打つべき場所がわかります。

株式会社Daysコンサルティング 代表 本宮直

この記事を書いた人

株式会社Daysコンサルティング 代表 本宮 直

中小企業診断士・キャリアコンサルタント。大手複合サービス企業の経営企画・投資部門で営業企画を担当したのち、外資系総合人材サービス企業で採用・教育と100名超のスタッフ管理に携わり、人材教育から離職率の改善に取り組む。2022年に独立。

社員時代から「現場がすべて」を信条に、経営支援の現場で泥臭く集めた「100の事実」から、組織運営の10の原理原則を導いた。人事評価制度の構築や管理職の育成、社外人事部として、中小企業の「人の仕組みづくり」を実務から支えている。


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